は?まだ15分もたってねー。
なのに見たところ仕事はほぼ完璧。
何なんだよ、こいつ…。
けど俺は
『心音、お前すごいんだな。頼んで正解だったよ!な、湊叶』
自分も少し見とれてたなんて思いたくなくて。
『知らねーよ。俺はお前が呼べっつーから呼んだだけ』
必死に見てねぇ“フリ”をした。
『ったく、湊叶はいちいち冷てぇな。ま、いいや。この調子で頑張ろうぜ、みんな』
『だな!』
『柊!ついでにこっちも頼む!』
『こっちもこっちもー!』
『わ、分かりました…!いっぺんには出来ないので順番でお願いします…!』
その後もあいつのおかげで着々と注文が片付いていき、気づけば余裕をもって作業ができるまでになっていた。
『心音ちゃんいいよなー。可愛いし、健気だし…それに料理もできるって』
『だよなー。まさに女の鏡って感じ!最近は話もしてくれるようになったし』
ほどほどに作業を進めていた俺の耳に入ってきたそんな声。
………へぇ。
あいつ結構人気あんだな。
別に俺は知ったこっちゃねーけど。
そう思いながらも俺はどこかモヤモヤするような、そんな気持ちを感じていた。
『……何だよ。こんな時に体調不良かよ?俺』
────その気持ちの正体なんて知らずに。
『何、お前体調悪いのか?』
『いや、別に。…で?なんかあった?』
いつの間にか隣にやってきた伊織にそう返す。