黙って俺のモノになれ【上】



『あーあ、いつもの湊叶くんだ。まー…あの顔は“彼女”だけの特権ってことか』



だからどの“顔”だよ…。



『彼女なんていねーし』



『そんなの分かんないじゃん!周りに誰か女の子いないわけー!?』



『いね…………。あー、1人だけいたわ。昨日転校してきたヤツが』



いない。


そう言おうとしてあいつの事を思い出した。



『えー!桜河に女の子?どんな子どんな子!』



そしてどうやら愛実(ナルミ)は女に興味津々らしい。



『……めんどくせーから関わってない』



『もー、湊叶くんは…。じゃーいい!今度桜河行く!!』



『頼むから騒ぐなよ。つか、イベントする時言うからそん時にして』



『分かった!誘ってよ?』



『はいはい』



『うっわー。ちょー適当!』



話しているうちに愛実の家に到着した。



『あー疲れたー。送ってくれてありがとう、湊叶くん』



『あぁ』



家に入ろうとした愛実を見て、俺も背を向けた。










『─────湊叶くん!』




足を進めようとした俺は、愛実の声で再び足をとめた。



『私よりいい女の子を彼女にしないと怒るからね!』



『だから……………』



『ううん、今に限って言ってる訳じゃない。それに私本気で言ってるからね?これだけは言っておきたくて。じゃーまた!ばいばい』



言うだけ言って、愛実は今度こそ家の中に消えた。


それはものすごい速さで。






何だよあいつ…………言い逃げかよ……。




───────………