『あーあ、いつもの湊叶くんだ。まー…あの顔は“彼女”だけの特権ってことか』
だからどの“顔”だよ…。
『彼女なんていねーし』
『そんなの分かんないじゃん!周りに誰か女の子いないわけー!?』
『いね…………。あー、1人だけいたわ。昨日転校してきたヤツが』
いない。
そう言おうとしてあいつの事を思い出した。
『えー!桜河に女の子?どんな子どんな子!』
そしてどうやら愛実(ナルミ)は女に興味津々らしい。
『……めんどくせーから関わってない』
『もー、湊叶くんは…。じゃーいい!今度桜河行く!!』
『頼むから騒ぐなよ。つか、イベントする時言うからそん時にして』
『分かった!誘ってよ?』
『はいはい』
『うっわー。ちょー適当!』
話しているうちに愛実の家に到着した。
『あー疲れたー。送ってくれてありがとう、湊叶くん』
『あぁ』
家に入ろうとした愛実を見て、俺も背を向けた。
『─────湊叶くん!』
足を進めようとした俺は、愛実の声で再び足をとめた。
『私よりいい女の子を彼女にしないと怒るからね!』
『だから……………』
『ううん、今に限って言ってる訳じゃない。それに私本気で言ってるからね?これだけは言っておきたくて。じゃーまた!ばいばい』
言うだけ言って、愛実は今度こそ家の中に消えた。
それはものすごい速さで。
何だよあいつ…………言い逃げかよ……。
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