黙って俺のモノになれ【上】



愛実の気持ちになんて気づくはずもなかったし、正直驚いた。


─────────けど。



『…わりぃ、愛実。俺はお前の気持ちには…』



『いや…っ!聞きたくない……っ。────お願い、好きって言ってよ…。行かないで…』



そう言って愛実は優しく、だけどしっかりと俺を抱きしめた。


疑ってた訳じゃねぇけど、そうされたことで愛実の気持ちは痛いほど伝わってきた。


俺の胸板に顔を押しつけ、泣きじゃくる愛実。


確かに、俺がまともに会話をした女は愛実だけだし。


こーやって俺が名前で呼ぶ女も愛実だけ。


それでも。



『愛実…ごめん。やっぱり俺はお前の気持ちには応えられない』



好きってのはそれだけじゃねぇと思うから。


俺が唯一話す女だからこそ、いい加減な返事はできない。



『───────でも。気持ちは嬉しかった。だから…ありがとな』



期待をさせないように

できるだけ傷つけないように


俺は自分の気持ちをはっきり告げた。



『湊叶くん…、ううん。聞いてくれてありがとう…。寂しいけどね、私湊叶くんのその笑顔見れただけで充分。湊叶くんってそんな顔もするんだね。幼馴染なのに…知らなかった』



『…は?顔?どんな顔だよ』



『え?あはっ。教えてあげなーい!』



『何だよ、それ』



『えへへ。あーあ、湊叶くんの彼女になりたかったなぁ』



そう言う愛実の表情は何だか少し吹っ切れているような気がした。



『んな事言うなよ。こっちが敢えて触れねぇよーにしてんのに』



『あー!一応気にしてたんだ(笑)湊叶くん優しいとこあるんだねー!』



『……ちょっとでも気にした俺が馬鹿だった』



『えーなにそれー!!ひどくない!?』



『別に』