ただ、黙ってあたしたちの会話を聞いているだけ。
「……俺たち引っ越すのか?」
そんな裕くんが口を開きました。
「うん、夏休みに入ってすぐ引っ越そうと思ってる。でも心配しないで!そんなにここから遠くないから。転校もしなくていいからね」
お母さんの言葉に裕くんはほっと息をはく。
あたしたちの1番の不安はそこだよね……。
でも、よかった……。
やっと馴染めてきたのに転校なんて言われたら、あたしもショックだもん………。
とりあえず安心だ。
そう思っていたから……
お母さんの次の言葉を理解するのに少し時間がかかりました。
「あ!でも心音は転校よ!あんたはこの春入学したばっかりだから、変わっても問題ないでしょ?」
……テンコウ?
てんこうって、あの転校ですか?お母さん………。
やっと…やっと天之宮での生活に慣れてきたのに…。
こんな事ってないよ………………。
そう思いつつもあたしは
「………わかった」
そう言うしかありませんでした…。