母さんは……俺が小2の時に死んだ。
あまりにも突然で、幼かった俺はすぐには事態を把握できなかった。
相手の飲酒運転で即死だったらしい。
だけど、父さんは俺の前で1度も泣かなかった。
本当つえーなって思うよ。
けど…俺の知らねぇとこでたくさん泣いたんだろ?
知ってんだよ、俺は。
あれは小3の頃……
───────………
トイレに行きたくなった俺は布団から出てトイレに行こうとした。
あれ…?あかりがついてる。
だれかいるのかな…?
俺は何の気なしに明かりのついた部屋を覗いた。
「……彩葉(イロハ)。何で…何でだよ…。まだ…そんな年じゃないだろ…っ。戻ってきてくれよ…っ!」
そこには見たことのない父さんの姿があった。
「お…とうさん……?」
俺は見てはいけないものを見た気がして…
トイレに行くのも忘れて自分の部屋へ逃げ帰った。
───────………
俺が見たのはその1回だったけど、きっと何度も何度も涙を流したはずだ。
母さんの写真の前で。
もしかしたら、今でも泣いてるかもしんねぇ。
それほど…母さんの死は早すぎたんだと思う。
「奏夢…。お前、泣いてるのか?」
いつからいたんだろうか。
背後のドア付近に仕事を終えたのだろう父さんがいた。
…………俺が泣く?
「そんなわけ……っ」
ねぇだろって言おうとしたんだけど…。
頬を伝う涙の感触がして俺は言葉を紡ぐのをやめた。



