「奏夢様。ただいま貴之様は自分のお部屋にいらっしゃるそうですよ」
「そうか、分かった。ありがとうな」
「いえ。ごゆっくり」
俺は真っ直ぐ父さんの部屋へ向かった。
☆*☆*☆*☆*☆
「お久しぶりです、社長」
「その声は奏夢か?」
椅子に腰掛け、外を眺めていた父さんがこちらを振り向きながらそう尋ねる。
「はい」
「元気か?学校の方はどうだ?」
「お陰様で。この間の定期テストも全て1位でした」
「そうか。あんまり頑張りすぎるなよ」
頑張りすぎるな、か。
この家系に生まれた時点でそれは無理な願いだぜ、父さん…。
楽に親の跡を継げるなら皆そうしてる。
だから、俺は頑張って1位を取り続けるためにも頑張らなきゃなんねぇ。
……未来の朝霧コーポレーションのために。
「はい」
「後で母さんにも会っていくといい。お前が帰ってきたのを知ったら絶対に喜ぶぞ」
「そのつもりです」
「それじゃぁ私はまだ仕事があるから。ゆっくりしていきなさい、奏夢」
「ありがとうございます」
そして次に向かった場所は母さんのいるリビングルーム。
「母さん……ただいま…。帰るの遅くなってごめんな」
「桜河にさ、ついに女が来たんだぜ?すげぇバカなやつでさ。母さんにも会わせてやりてぇよ」
俺は学校での事を洗いざらい話した。
─────分かってる。
返事が返ってこないことくらい。



