黙って俺のモノになれ【上】





☆*☆*☆*☆*☆







───────約束の時間から10分経過。



一体どれだけ俺を待たせるんだ。











だけど、心音が来たのは更に10分後だった。



「…お、お待たせしました…」



「あぁ、待たせすぎだ。行くぞ」



今日は朝、担任に呼ばれてっから一応急いでんだけど。



「俺、お前の歩幅に合わせるとかいちいち面倒な事しねぇからな。ちゃんとついてこいよ」



いちいち歩幅なんて合わせてたら確実に間に合わねぇ。



「分かりました…」



「あ、それと今日の昼はお前んとこ行けねーから。俺の事待ってんなよ」



「はい…」



………ほっとした顔しやがって。


顔に出すぎなんだよ。


バカ女に腹立ちながらも、とりあえず言うだけ言った俺は校舎への道を急いだ。


心音が小走りで汗だくになっているのも知らずに。







「じゃーな」



心音の教室に着き、送り届けた俺は心音に一瞥もくれず自分の校舎へ走った。







☆*☆*☆*☆*☆







「………先生っ。遅れて悪い」



「あぁ、構わんよ。ところで今日の話だが、進路について聞きたいんだ。お前は親の後を継ぐ方向でいいんだな?」



どうせその話だろうなと思ってた。


どうするもこうするも俺にはその道しかねぇんだよ。



「あぁ、そのつもりだけど」



「そうか。では進路の実現に向けてこれからも勉強に励みなさい。話は終わりだ。わざわざ呼び出して悪かったね」



「どーも。じゃ」











小さい頃から親父の仕事を継ぐように言われてきた俺にとって、今更他の選択肢なんてねぇし。


それに、親父を嫌ってるわけでもねぇし、親父の仕事が嫌だと思ったことも一度もない。


だから俺には他の道なんて存在しない。




────だから…


総合学科に通ってるくせに、自分の夢を持ってるやつは素直にかっこいいと思う。


なんつーか、自分の夢持ってる奴って目が違うんだよな。


自身に満ち溢れてるっつーか、とにかく輝いてんだ。


“夢”ってすげぇもんなんだなってつくづく思う。