俺がどんだけそう言っても目を覚ます気配のない心音。
───っのあま!さっさと目を覚ませ。
それから何度か声をかけ続けるとやっとのことで、少し反応を示した。
ここで再び寝られるとかたまったもんじゃない。
「ったく!早く起きろ、バカ女!」
するとやっと目を開け、目覚めた様子の心音。
そして事態を把握したのか目を大きく見開き…
叫ぼうとしているのを瞬時に察知した俺はこいつが叫ぶ前に右手で口を塞いだ。
「きゃ……っ」
あぶねー。
「うるせー。騒ぐな、喚くな。ほかの奴らが来るだろ?」
あいつらがこいつの悲鳴に気づいてここにくるなんて、絶対面倒くさいどころじゃすまねぇ。
そんなめんどくせぇことはこっちから願い下げだ。
そう思いながらふと心音の方を見ると
だんだんと顔が赤くなっているように感じた。
は?どこに赤くなる要素があるんだよ。
「お前何でそんな顔真っ赤なわけ?」
本当、変な女。
そしてその数秒後、俺はその理由を理解する。
「…ってあー、わりぃ。口ふさいでんの忘れてたわ」
あぶねぇ。窒息死させるとこだった。
そりゃ、顔も真っ赤になるわけだ。
「っぷは……。朝霧くん…はぁ……、あ、朝からあたしを殺す気ですか……っ」
何言ってんだ、こいつは。
お前に何の恨みがあって俺がお前を殺すんだよ。
やっぱ馬鹿決定だな。
「は?誰がそんなことすっかよ。つか、早く行くぞ」
「あ、あの…あたしまだ何も準備してないです……」
……それもそうか。
こいつさっきまで爆睡だったしな。
いちいちとろい奴だ。
「ったく!とろいな。早くしろ、1分だけ待ってやる」
「い、1分…ですか……?そ、そんなの無理ですよ……」
…………こいつには無理か。
「1分もありゃ充分だろーが。しょーがねぇ、10分だ。それ以上は待たねー。遅れたら…どうなるか分かってんだろうな?」
ただでさえ、この俺を待たせるんだ。
遅れるなんて許さねぇに決まってる。
「わ、分かりました…」
それでいい。



