……………あれから、強引ながらも何度か彼の優しさに触れた帰り道。
───────………
───グイ
『きゃ……っ』
バイトへの道を歩いていると、突然朝霧くんに腕を引かれバランスを崩し倒れそうになる。
すると、朝霧くんに抱きとめられたタイミングで、すぐ横を車が通り過ぎた。
『ったく。あぶねーな』
『す、すみません…』
『ちげーから。あぶねーっつったのはあの車。別にお前のことじゃねーよ』
なんだ…。
そうだったんだ…。
強引だったけど…車から遠ざけてくれたんですね…。
それより今のこの状況…。
背中には朝霧くんの右腕。
視界には朝霧くんの胸板。
恥ずかしすぎます…。
でも…不思議なことに嫌だとは思わない。
あるのは…少しの抵抗だけ。
抵抗、と言っても“嫌悪”の抵抗ではなく、“恥ずかしさ”からくる方の抵抗。
なんたって…
異性とこんな状況になったことありませんから…!
一方、朝霧くんは何事もなかったかのようにあたしから身体を離し
『お前はこっち歩いとけ』
そう言い、車道側によると再びスタスタと歩いていく。
『おい。早くしろよ、のろま』
『は、はい…』
だんだん分かってきたことなんだけど…
朝霧くんは時々、言ってることとやってることが食い違ってることがある。
今だって…
ちゃんとついてこい、なんて言っておきながら歩幅はちゃんとあたしに合わせてくれてるんです。
おかげで全然疲れていないし、朝みたいに汗もかいてません…。
朝はきっと…用事があって急いでたんだよね…。
きっとそうだよ。
だって…そんなに悪い人には見えないから…。
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