【心音side】
「……い、…お………い。おい!」
……あれ、何だか声が聞こえる…。
これは…………夢……?
「ったく!早く起きろ、バカ女!」
あたしを呼んでる…?
誰だろう…。
ぼーっとした頭で薄らと目を開ける。
そこにはあたしの上にまたがる大きなシルエットが……。
「……………!きゃ……っ」
必死に抵抗しようと開いた口をすんでのところでシルエットの犯人…朝霧くんの手によってふさがれる。
「うるせー。騒ぐな、喚(わめ)くな。ほかの奴らが来るだろ?」
「~~~~~~~っ」
そ、そんなの全部朝霧くんのせいじゃ……。
それより…い、息が苦しい…………。
「お前何でそんな顔真っ赤なわけ?」
そんなあたしの苦しさなどつゆ知らず、そんな事を口にする彼。
…だ、だから、あなたに鼻と口をふさがれて息が………。
「…ってあー、わりぃ。口ふさいでんの忘れてたわ」
「っぷは……。朝霧くん…はぁ……、あ、朝からあたしを殺す気ですか……っ」
「は?誰がそんな事すっかよ。つか、早く行くぞ」
そう言ってあたしの腕をがっしりと掴む朝霧くん。
で…でも………………
「あ、あの…あたしまだ何も準備してないです……」
「ったく!とろいな。早くしろ、1分だけ待ってやる」
「い、1分…ですか……?そ、そんなの無理ですよ…」
いくらなんでも、1分で準備は厳しすぎる…。
朝霧くん…鬼のようです…。
「1分もありゃ充分だろーが。しょーがねぇ、10分だ。それ以上は待たねー。遅れたら…どうなるか分かってんだろうな?」
10分……。
でも早くしないと何されるか分かんない。
逆らうなんて絶対に出来るわけないし…。
そうなると
「わ、分かりました…」
あたしには従う他ありません…。