イレカワリ

その返事にあたしはますます疑問を浮かべた。


純は何か話したいことがあるはずだ。


そしてそれは海のことである可能性が高いと感じていた。


あたしは他愛のない会話をしながらお弁当を口に運んだ。


純は海の事を知っている。


海がどうして死んだのか、歩はどうして海の記憶がないのかも、純は知っているかもしれないんだ。


「本当に?」


そう聞くと、純はチラリとあたしの方へ視線を向けてきた。


その目は鋭く、まるで獲物を睨み付けるような目つきで、あたしは一瞬たじろいた。


「お前は海の事を忘れているんだよな?」


そう聞かれて、あたしはまた返事に詰まってしまった。


純に対してどう返事をするのが正解なのか、わからない。


あたしは小さく頷いて見せた。


視線を泳がせて、純と目が合わないようにする。


「その事はまぁいい。だけど、今日はあの日だ。それは忘れてないだろうな?」
穏やかだった口調も険しいものに変わっている。


あの日?


あの日って、なに?


あたしにはさっぱりわからない。


だけど純は怒っているし、知っているフリをする方がいいのかもしれない。


「も、もちろんだ」


あたしは震える声でそう答えたのだった。