イレカワリ

突然何を言い出すのかと思えば、突拍子もない言葉が降りかかってきて、どう返事をしていいかもわからない。


「ほら、これから先生活していくためには絶対に俺たち2人で行動しなきゃいけない時って出てくるだろ?

その時だけ一緒にいるのはどう考えても不自然だ。だけど、付き合っていると言う事にしておけば、常に一緒にいても不自然じゃない」


早口でそう説明する歩にあたしは徐々に目を見開いて言った。


確かに、一緒に行動するためには付き合っているフリをした方が便利だ。


それは理解できる。


だけど、それは女子たちからの歩への攻撃が始まるかもしれないと言う事だった。


渋っているあたしに、歩の表情は徐々に暗くなっていく。


「ダメ、かな?」


「ううん。ダメじゃない。むしろいいアイデアだと思うよ」


「それなら!」


「でも、歩は好きでもない子と付き合って平気なの?」


そう聞くと、歩は目を丸くしてあたしを見た。


「演技っていっても、ずっと一緒にいるんだよ? 歩って、そういう事平気でできるんだ?」


少し歩を責めるような口調になってしまう。


その時気が付いた。


あたしは歩が演技で付き合おうと言った事がショックだったんだ。


あたしは歩と本気で付き合いたいと、そう思っていたのだと気が付いた。


「俺だって、好きでもない子と演技で付き合ったりはしないよ」


歩が穏やかな口調でそう言った。