「待たないの?」


「どうしてこいつを待っている必要があるんだよ」


純が吐き捨てるようにそう言った。


たしかにそうかもしれない。


人の体を使って売春していた歩なんて、待っている必要はない。


「起きたら勝手に帰るだろ」


純はそう言い、ホテルの玄関を開けた。


外はオレンジ色に染まり始めていて、長い時間気絶していたんだと言う事がわかった。


でもよかった。


体はもとに戻ったんだ。


あたしはまた、マホとして生きていくことができるんだ。


それは今までで一番の喜びだった。


純と2人で手を繋ぎ、家までの長い道のりを歩き出した。


あたしの体はもとに戻った。


だけど、わからない事だらけのままだ。


「ねぇ、記事で少し読んだんだけど、海は自殺だったんでしょう?」


そう聞くと、純は眉を寄せて左右に首を振った。