車の排気ガスがあたしたちを覆いこんだ。


「マホの体を返せ」


純が歩を真っ直ぐに見てそう言った。


歩は軽く肩をすくめると、「わかったよ」と、答える。


そしてホテルのドアを開けた。


「さすがに、ホテルの部屋の前で気絶するわけにはいかない。入れよ」


歩に言われてあたしは一瞬躊躇した。


人の目が届かない室内について入って大丈夫だろうかと、不安が過る。


「行こう」


純に促されて、あたしはようやくホテルの一室へと足を踏み入れたのだった。