今更抵抗したり逃げたりする気もないようで、ため息を吐き出した。


「返して」


あたしは返事もせずにそう言った。


「全部、純から聞いたのか」


「そうよ」


歩の視線があたしから純へと移動した。


「なんでだよ? 俺がどの女と入れ替わって売春しようが、お前は何も言わなかったのに」


残念そうな口調でそう言う歩。


あたしはその言葉に目を丸くした。


歩は今までも何度となく同じ事を繰り返していたのだ。


あたしは愕然とした気持ちで歩を見ていた。


あたしは歩の事なんて何も知らなかったんだ。


何も見えていなかったんだ。


その事が、とても悲しかった。


「お邪魔みたいだから、俺は帰らせてもらうよ」


男はそう言うと、そそくさと車に乗り込んだ。


女子高生をお金買っていたとバると自分の身が危ないから逃げたのだ。