「これは、私をずっと裏切ってた分。」
パチン。
「これは、金澤を傷つけた分。」
パチンッ。
ビンタをする音。
麻美は、殴られたままで震えながら下を向いていて、
髪の隙間から見えた麻美の涙。
「…なさい。」
「…は?」
「…ごめんなさい。
ごめんなさい。」
いきなりそう言って泣き崩れた麻美。
手で顔を覆って、
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
何度もそう言ってきた。
でもね、
もう遅い。
「…もう遅いんだよ、
麻美。
もういいよ、
麻美にはたくさんの思い出をもらったから。
悠介と幸せにね。」
精一杯の強がり。
そして、振り返り悠介を見据えた私は、
悠介を蹴り飛ばした。
「…この糞男。
お前が初恋なんて、人生で最悪の汚点だわ。
麻美幸せにしないと許さないから。」
倒れこんでる悠介を無視して、社会資料室からワークだけを取り出そうとすると、
私よりも早くワークをとった金澤。
片手は私の右手を優しく包み込んで、
片手は、ワークを全部持って、
私の腕を優しく引く
金澤の背中が涙で歪んで
霞んでいた。


