性悪男子の甘い毒




旧校舎の隙間から風が吹き、現実に引き戻される。


でも、なぜか腕を離したくなかった。


「こ、晃椰君…?」

「昨日は悪かった…。怪我するとか、カッコ悪くてイライラしてた。…ほんとに、ごめん……」

「ううん…。あたしこそ、言い方キツくてごめんね。今回はお互い様だよ」

「そっか…。ありがとな…」

「いいえ。怪我も大した事無くて良かった…」


いつものアイツの笑顔を見られて一安心。


叶芽の優しさも素直に受け止められた。


「…それより‼︎そろそろ、解放してよ‼︎」

「うわっ‼︎無意識‼︎わりぃ‼︎」

「こ、こうゆうコトは、好きな女の子にするんだよ⁉︎」


抱きしめてた腕を解放。


転んだ時ぐらい恥ずかしいっつーの…。



そして背中を向けた叶芽が、急に振り向いて俺を見上げた。


「1つだけ訂正。晃椰君、カッコ悪くないよ。昨日、1番カッコ良かった‼︎」


ふわっと柔らかく微笑み、先を行く華奢な背中。



今のはヤバイ……。


素直な方が、普通に可愛過ぎだから…。