性悪男子の甘い毒




少し震える指先をぎゅっと握り締めた。


駅前の大きな時計が指し示す時刻は、17時より少し前。


夏特有の蒸し暑い空気に包まれてるのに、指先はなぜか冷えたまま。



今日は晃椰の誕生日で………


菊池先生に会おうって決めた日。



塾に足を運び、各教室を覗き回る。


菊池先生は数学の授業が行われる部屋で、ノートをじっと見詰めていた。


横顔は文句ナシにイケメンだ……。


勇気を振り絞り、軽くノックをして教室に入る。


「あの…菊池先生。こんにちは」

「ん?あ、叶芽ちゃんだ。こんにちは」


優しい微笑みを向けてくれる。


名前で呼ぶなんて特別扱いし過ぎだよ。


「あれ…?今日って、叶芽ちゃん授業無いよね?どうしたの?」

「先生にきちんと自分の気持ちを伝えに来ました」

「ははっ、そっか。俺、期待しちゃうよ?」

「えっ‼︎き、期待は…しない方が…っ」


ポンポンと頭を撫でられ、申し訳無さそうに先生は眉を下げる。


「…ごめんね、嘘だよ。からかい過ぎた。叶芽ちゃんの気持ち教えて?」