性悪男子の甘い毒




そして社長のデスクの椅子に腰掛け、母さんは俺を見上げた。


「晃椰の好きな道を進みなさい。道から外れそうになった時は助けるから。応援してるわ」



父親と離婚してから常に仕事人間だった。


運動会とか学習発表会とか、行事に来た記憶が無いぐらい。


いつの間にか、俺は嫌われてる…とか変なこと考えてさ。


でも違った。


女手一つで俺を育てるために奮闘してくれてたんだよな。


「母さん」

「んー?なに?」

「…ありがと」

「晃椰らしくない‼︎大丈夫?熱あるの?」

「ねぇよ‼︎もう帰るわ‼︎」


せっかく人が素直になったのに…‼︎


社長室のドアに手を掛けた時、背中に声を掛けられた。


「今日は早く帰るわ。たまに、ご飯食べに行く?」

「じゃあ〜……焼き肉で」

「ふふっ。了解」


心の奥底にあった何かが取れて楽になれた。


そんな気がした夕方のことだった。