性悪男子の甘い毒




図書室に入り辺りを見回すと「晃椰さん」と控えめな声が響いた。


いつもに増して畏まった雰囲気の美希。


「急にごめんなさい…」

「別に良いけど。あ、勉強なら教えてやれねーぞ?」

「ち、違うんです‼︎そういう事じゃなくて……真面目なお話なのです…」

「俺に?」


俯いたまま、美希は消え入りそうな声で言葉を紡いだ。


「…晃椰さんは、叶芽さんって彼女がいますまんね」

「まぁ、いるけど……」

「彼女いる事は分かってます‼︎でも、私は晃椰さんが好きです‼︎ずっと、ずっと……大好きだったのです」


一瞬、時間が止まった様に思えた。


目付役頼まれてたのに、そんな俺に告白しちゃうなんて。


〝好き〟って気持ちは素直に嬉しいけど、俺には………


「ごめんな。美希」

「そうですよね…。分かってました」

「俺、彼女いる上にお前の兄ちゃんに目付役頼まれてんの。だから……ごめん」


ポロポロと涙を落とす美希の背中を撫でる事が俺に出来る精一杯。