性悪男子の甘い毒




素直になれたらどれだけ楽か。


コイツも俺も、分かってない。


「ねぇ、あたしかき氷食べたい」

「俺、今バイト上がったんだけど。お前バカ?」

「へぇ〜……お客様にそんな口の聞き方して良いの〜?店長さーん‼︎」

「はぁ⁉︎わ、分かったっつーの‼︎何欲しいんだよ…」

「かき氷2つ‼︎レモンとイチゴね?」


働かせやがって……。


腹の奥底で悪態をつき、アイツの座る席にかき氷を2つ置いた。


「はい、どーぞ」

「ありがとう‼︎奢ってくれたお返しに1つあげる‼︎どっちが良い?」

「いらねーよ」

「無理。お腹壊すもん。どっちー?」

「じゃあ……レモンで」

「はい‼︎パーカーもありがとう」


首をコテッと傾げて笑った。


きっと、こうゆうトコがモテんだろうなぁ〜……。


しかも案外、律儀だし。



「叶芽…。腹立つけどありがと」

「腹立つは余計だよ…。晃椰君♪」

「君付けキモ…」

「最低‼︎バーカ‼︎やっぱ嫌い‼︎」


なんだか、今年の夏は妙に暑く感じた。


ただ、楽しかった気がもする……。