性悪男子の甘い毒




逆ナンをかわしつつ、流れ作業で仕事をしてると聞き覚えのある高い声。


そして、俺の名前を呼んだ。


「高槻君‼︎」

「えっ、あ……藤咲」


また、ワンピースの水着姿で来たアイツ。


お団子頭の髪型はどこか見慣れない。


「パーカー…返しに来たんだけど、バイト中だから忙しいよね?」

「あと30分ぐらい待ってくれたら上がりなんだよな…」

「あっ‼︎全然、待ってるよ‼︎迷惑じゃないなら」

「わりぃ。そっちで待ってて」


素直に頷いたアイツを連れて、従業員の休憩スペースで待たせた。



ほんとは、パーカーだけ受け取って帰せば良かったのに。


その一瞬で終わらせたくなかった…。



残りの30分働いて、やっとバイト終了。


1人でスマホをいじってる背中に話し掛けた。


「叶芽、ちゃん」

「うわっ…‼︎ちゃん付けキモイ…」

「やっぱりお前、可愛くねぇな…」

「可愛いって思われなくて良いし‼︎」

「お世辞だ、バーカ‼︎」

「ひどくない⁉︎」


顔を合わせれば、いつも通りの言い合い。


お互い可愛くない性格してるよな〜…ほんと。