いつも叶芽が使う最寄駅。
手を繋いだまま送ったけど、時間のせいか人も疎ら。
彼氏として心配なんだけど……。
「今日も送ってくれて、ありがとねっ」
「別に。それより、1人で帰れるか?」
「えっ⁉︎バカにしないでよ〜‼︎1人で家にぐらい帰れるもん‼︎」
「ちげーよ。心配してんの。お前も、一応は女の子だしー?」
「いっ、一応は……余計だから…」
顔を赤くして俯いたまま、小さく呟く。
寒空の下、絡まる指が微かに熱くなる気がした。
「じゃあ…もう少しで電車来るから。あたし、行くね?」
「あっ、待った。もうちょいだけ…」
「晃椰…?」
可愛い声で、俺の名前を呼ぶ叶芽。
腕を掴み引き止めて、少し冷たい唇にキスを一つ。
「…ん。気ぃ付けて帰れよ」
「きゅ、急にどうしたの?びっくりするじゃん‼︎」
「好きだからしたくなった。こんな理由じゃダメ?」
「素直過ぎるの晃椰らしくない…。でも、好きだよ?」
叶芽の言葉で、俺の方が返り討ち。
こんなに寒い空の下だけど。
俺は叶芽が隣にいれば、あったかい。
俺だってお前のこと、好きだから。