漆黒のような黒髪に、少しだけ猫を思わせるような綺麗な茶色の瞳。
吃驚して、何も言葉が出ない私に対して、その人は、よっ、と私の前へ立つ。
見たところ、私とそんなに歳が変わらないように見える。
首元に掲げられているネックレスが一瞬、キラリ、と光った。
「こんなところに、一人で住んでんの?」
「え、ええ…もう何年も…」
「こんな、もういつ崩れてもおかしくない城に?
女の子がひとりで?」
「…もとは、私の家だったのよ…」
「…ということは、王女サマ?」
「そう、ね…。もう違うけれど」
「へえ…、これは驚いた。
…っと、俺はネオ」
「私は、ラン。ラン=セルドナ」
「やっぱり。王女サマだったんだな」
ネオ、と名乗った青年は、私の前でしゃがみ込み、膝の上で大人しくしている猫を撫でた。
猫が、にゃあ、と一声鳴いた。


