しかし、相手はなんとなく察知したようで。
「…誰が返すかよ!」
その場で動けない私に、男の人がゆっくり近づいてくる。
「それに、今のあんたに取り返せるはずがない。
なんなら、あんたも売ってやろうか」
目の前の悪魔が一歩一歩近づきながら、嘲笑う。
その姿は、とても滑稽だ。
「――――…その娘に触るな」
その突然の声で、ハッ、と息を飲む。
確かにネオの声なのに、それはまるで別人のように冷たく鋭かった。
背筋も凍るほど、とはこのことだ。
それは彼も同じだったようで、私のすぐ目の前で立ち止まりネオの方へ視線を向けた。
私も目を瞠ると、ネオの表情はいつもと違い、冷たく―――初めて怖い、と感じた。


