しかし、なるべく見失わないように、と追いかけてきたつもりなのに、あっけなく見失ってしまった。
黒い影は路地をくまなく駆使して、私を撒いたのだ。
もともと、そんなに体力があるわけではないため、少し走っただけで息があがる。
屈んで、はあ、はあ、とあがる息をなんとか落ち着かせていると。
「お嬢さん、こっちだ!」
頭上から、私を呼ぶ声が聞こえた。
最初、どこから聞こえるのだろうと周りを見渡してから、ようやく視線を上へあげる。
その瞬間、黒い影が目の前に降り立った。
…本当に、身軽なのね。
なんて、目の前に立つ人物にそんな呑気なことを思い浮かべてしまう。
「…早く!」
「あ、うん…!」
ネオの声で、意識が元の位置に戻った私は、再び共に駆け出した。


