数分も経たないうちに、船は出港した。


ざあ…、と波しぶきをたてながら、ゆっくり船が動き出す。



「本当に沈まないのね…」


そっ、と下をのぞきながら、隣にいるネオに言うと、笑われた。



「それが人間の作りだした文化だよ」



その言葉と同時に差し出されたもの――



「…林檎?」


「お腹空いただろ?」



空腹なんて、すっかり忘れていた。

しかし、自覚すると、襲ってくる空腹感。



「ありがとう。いただくわ」



両手でそれを受け取って微笑むと。



「どういたしまして」



彼もまた、私に笑顔を向けた。