再びネオのもとへ戻ると、先ほどの黒猫と楽しそうに戯れていた。
黒猫の方もすっかり懐いたらしい。
「用事は済んだかい?」
近づいた私に気づいたネオが、黒猫を撫でながら私へ問いかける。
「…ええ、ありがとう」
「じゃあ、いい?」
「その前に」
「ん?」
「この城を出た時点で、私はもう何者でもなくなる。
だから、…そうね、今後私のことはリアと呼んで」
「…セルドナの名を捨てると?」
「ええ」
「意志は固い、か」
「…ええ」
「…それなら、仰せのままに。リア嬢」
彼は少し微笑みながら、胸の前に左手をあてて、頭を垂れた。
それが、私が外に出るということだ。
城から出るということは、この地を捨てるということ。
私の名を、捨てるということ。
それが、けじめだ。
望んだことの、代償である。


