部屋に入れば、静寂が待ち望んでいたかのように一切の音を消す。
さっきまでの会話が嘘のよう。
部屋の中は、ところどころが朽ちて、瓦礫の破片が散らばっている。
そんなところに佇む衣裳ダンスの上に置いてある一つの写真立てを手に取った。
写真の中で、微笑む男女。
とても優しそうに、私を見つめる。
「…お父様、お母様。
私、ネオと外へ行くわ。
この目で、いろんなものを見たいの。
ずっと、憧れていたものを見てくるわ。
……今まで、見守ってくれて、ありがとう」
そして、胸に下げていたロケットペンダントを外して、写真立ての前に置く。
「―――さようなら。…ありがとう」
すべてをそこに置いて、私は静かに扉を閉めた。


