手元のいちごミルクにだんだん視線が下がって、ため息が漏れる。
ため息なんて、向こうのほうが付きたいだろうに。
椅子が軋む音がして、静かな声が降ってきた。
雲にのって届くような、静かな、声。
「理由も何も聞いてねえもんな、俺」
「……そうですね」
「勝手に“別れよ”って電話してきて」
「……そうですね」
「は?つったら“じゃあね”とか言いやがって、“恋人解消ね”とか言いやがって」
「はい」
「勝手に電話切りやがって」
「はい」
「すぐ着拒しやがって」
「……はい」
「音信不通になりやがって」
「……………」
「今さらこうやってのこのこ会いにきやがって」
「……………」
「なに考えてんだよ自己中女。言ってみろ」
あくまで、静かな声だった。
カラカラの喉を湿らせた。彼の好きないちごミルクで。顔に似合わず甘ったるい味。余計に喉が乾きそう。
重い重い声帯を震わせて、声を、絞り出さなくては。


