惨事が片付いたときにはもう、私の高級ティッシュは底をついていた。無念。
「あー手ぇベタベタするウゼェ」とかなんとか言っている目の前の男を一瞥して何の気なしにまた小さな街に目を向けた。
「……あれ」
そういえばさっきチャイム鳴ったけど。
思い出して、授業出なくていいの、そう声をかけようとまた向かいあう。と。
「……で?」
さっきとは打って変わって静まり返った雰囲気をまとう彼と、目が合った。
右手を空中でぷらぷら振りながら、探るように私の目を見てくる。
思い切り椅子の背もたれに体重をあずけて足を組んで、態度は相変わらず大きいのに、さっきまでの砕けたオーラがなくなった。
挑発的な、目。
「……で、って」
「とぼけんなよ。きっちり話しに来たんだろ?」
「…………」
「お前3週間前に勝手に電話で別れるつってから音信不通だったもんなあ? 今さら直接話しに来たんだろ。聞いてやるよ」
ほら話せ、と言わんばかりに彼は視線を投げかける。
ああ、気が、重いなあ。


