沈黙が流れた。
私が呼び出したんだから私が言葉を落とさないと何も始まらない。
風がふたりの間を通り抜ける。制服をゆらして髪をなびかせて、時間を速回しするように、少し温度の低い、風が。
……昼休み終了の、チャイムが鳴った。
ああ、タイムオーバー。
今日はもうダメだ、と思ったとき。
ブチュッ。
「うおっ!」
えげつないほど汚い音と驚き声に、え、と思わず顔をあげて出どころを見る。
「……な、何してるんですか」
「っせえ何でもねえ! だーっ濡れた!」
そりゃそうでしょ。
目の前には紙パックを握り潰したらしい彼。ストローからミルクティーが吹き出てその右手を汚していた。
「え……ば、馬鹿なんです?」
「るっせえぞ! 本気でドン引いた顔すんな! ティッシュ! 早くティッシュ!」
なんだこの人。なんで急に紙パック潰しちゃったんだ。大丈夫かな。この人頭大丈夫かな。
疑問符を浮かべまくりながらブレザーのポケットからティッシュを出す。
あーあ、高保湿の高級ティッシュなのに。こんなことに使われるなんて。
「馬鹿なのかな……」
「2回言うな。考え事してただけだっつーの」
どうすることもできず紙パック握ったままの右手を困惑しながらも拭いてやると、また舌打ちをされた。何なんだ。


