元カップル同士ってみんなこんなにギスギスしてるのものなのだろうか。いや絶対違う。そんなわけがない。



「この男に問題があるだけで」

「あん? なんか言ったか」

「いいえ何も」



彼は持ち前の切れ長の目でこっちを一瞥、舌打ちをひとつしてこの空間の真ん中に置いてあった椅子にどっかり腰をおろした。

荒々しい態度に似合わずふわりと揺れる黒髪。隙間から見えるリングピアス。風にのってやって来る彼のにおい。



「で、何なわけ」

「はい?」

「キョトン、じゃねえよ。今日俺をここに呼んだ理由だよ馬鹿」



不機嫌最高潮な彼の言葉に、無表情でこてんと首を傾げると、またイライラしたように目をそらされた。

……ああ、ああ、忘れてた。



「まあまあ、落ち着いてください」



持っていたコンビニ袋から出したミルクティーの紙パックとストローを、彼の前の机に置く。


こっちだって、あなたの時間を奪うことは分かってたんだからちゃんと気を使って差し入れを持ってきたんですよ。

非常識なことをしてるのは分かってるけど、まあ、これくらいは。



「……は、何これ。お前、自分のは」

「買ってないです。いいです」

「っんでだよ、いちいちイラつくな! おら」



少しだけ驚いた顔をした彼は、机をはさんで突っ立ってる私を見上げてまた舌打ち1回。ここに来たときから手に持っていた紙パックを投げてきた。

いちごミルク。