怒ってるわけじゃない。真剣に、真実を知ろうとするその声に、私は拳を握った。
気が重くて叶わないけれど、息を吐いて。
全部を話すのが、けじめだ。
「……お母さんの症状が悪化した」
ぽつり落とした声がその場に溶けて、風にさらわれた。
「お父さんだけじゃ世話するの大変だから遠くの大学に行ってる余裕がなくて、その前に受験勉強してる余裕がなくて、だから、近くの専門に適当に進学することにした」
拳が白くなる。声が小さく揺れる。
頭の中をぐるぐる何度も、繰り返しながら。
「……でも、きっともっとがんばれば勉強もできただろうし、向こうと地元行き来することもできただろうし、それなのに、お母さんを理由に私は全部諦めて」
喉が鳴る。またカラカラだ。音を、声を、かき消すものは何もない。
いちごミルクも終わってしまった。
「恥ずかしくて、これ以上、……喜一に、かっこわるい姿見られたくなくて、……別れてほしいって、言いました」
息を吐いた。
途切れ途切れの言葉たちだったのに、まるで一息で話したような。息苦しさから解き放たれるように、長く長く。


