ハウトゥ・シナプス




表情に似合わず髪の毛はふわふわだとか顔に似合わず甘党だとか。どこかちぐはぐであの男は変だ。


でも、言っていることは正論だ。


3週間の音信不通を経て今さら会いに来てまだ何もしゃべらない私が、どこまでも勝手だっていうのは分かってる。

チャイムも鳴ったし、5限も始まってる。のに。



「……ん?」



ひとつの考えが思い浮かんで顔を上げた。

もしかしてあの男、帰って来ないんじゃないか。……遅い気がする。

だって、手を洗いに行ってわざわざ屋上の私のところに帰って来るかって。
来ない。そりゃあそうだ。私ならそうする。そりゃあそうだ。


だってしゃべらないし、時間のムダだ。


やっぱりタイムオーバーだった。情けないけど、悔しいけど、自分のこと許せないけど、もういい。迷惑かけるのはやめよう。



「パンツ見えんぞ」



帰ろう。



「ぬっ!?」



ガタガタガタッ。


突如ふわりと香った覚えのあるにおいに、私は驚いて椅子から落ちた。



「はあ? 何やってんだよテメェいい加減にしろや」

「あ……えぇと……いや、失礼しました……」



私の腕をぐっと掴んだ腕が私を引き上げて、また椅子に座らせた。

……戻ってきた。


やっぱり彼は、馬鹿なのかもしれない。


見上げていると「何見てんだよ」と睨まれる。ガラが悪い。だけど律儀にちゃんと、戻ってきた。

私の話を聞くために。