「あ、の」
口を開くとやっぱり喉は干からびていて、冷たい風が奥をヒュッと通り抜けた。ゴホゴホ、情けなくむせてしまう。
なんてかっこわるいんだ。
「なにやってんだよ」って彼は呆れて言ったけど、心配する素振りは見せなかった。背中をさすりもしなかった。
机をはさんで向かいに座ったまま、黙って落ち着くのを待っているだけ。
私がこんなとき情けをかけられるのが嫌いだってこと、知っているのかもしれない。
だって、3年も付き合ってたのだから。
「俺は、結構 覚悟決めて、真剣に付き合ってたよ」
口を開いたのは彼のほうだった。
ああ、くそ。先を越された。
「お前は違ったのかもしれねえけど」
さすがにイライラの臨界点が超えたのかもしれない。言葉にさっきとは違う刺がある。上手く私に突き刺さるような。
彼の中ではもう、とっくに答えが出ていたのかも。
「いいけど別に。飽きたんだろ。もうすぐ卒業だしそしたら世界も広がるし、いろんな出会いだってあんだろ。俺にもお前にも」
「……そう、ですね」
自分の口から想像以上に細い声が出て、指先が少し震えた。冷たい風が頬を撫でるから、余計にまた、震えた。
卒業、ですね。


