「んで、話ってなに~?」

彩乃が聞く。

わざわざ人気の少ない校舎裏まで皆をつれてきた。
話さなきゃ。

「あ、のね。この動画の事なんだけど。」

皆にスマホを見せたまま、再生ボタンを押した。


皆の顔に焦りが見えた。

「これ、どう言うことなのかな?なに話してたの?悪口?」

「ち、違うよ!その、瀧の…」

「彩乃!」

何かを言いかけた彩乃を紀保が止めた。

「悪口なんかじゃないよ。瀧の名前が出てたのは本当だけど。」

「じゃあ何を話してたの?悪口じゃないなら言えるでしょ?」

私は捲し立てる。
皆を信じてるからこそ、隠し事は何より嫌だった。

「それは…言えない。」

「なんでよ!?速く言ってよ!」

「言えません…。瀧さんは私達の事が信じられませんか?」

「信じたいから聞いてるんじゃない!!」

私は走り出した。

「瀧!」
「瀧さん!」

悔しくて、苦しくて、何より悲しかった。
涙が止まらない。
私は屋上の扉の前で座り込んだ。
ほんとならこのまま屋上に出て
飛び降りてしまいたかった。

それでも、屋上の扉は開かないし。
走ってきたから息は切れているし。

「疲れた…。」

涙は止まらなくて、
このまま早退しようか、などと考えていた時。

「…あの。」

「は、はい。」

声をかけてきたのはクラスメイトの
鈴木 玲(スズキ レイ)さんだった。
あまり話したことはないけれど、
教室でいつも1人。
とても綺麗な子で、他の子とは雰囲気が違う感じがして、近寄りがたいからだと思う。

「これ。」

渡してくれたのはハンカチだった。
彼女を見上げると
微笑みながら

「涙、拭いて?」

「あ、ありがとう。」

涙を拭いて、

「ごめんね。これ、洗って返す。」

「別に良いのに。」

ふふ、と笑った彼女はとても美しくて
女の私でも惚れてしまいそうだった。
同時に、
いつも笑っていれば良いのに。
なんて思ったりもした。