桜舞う季節、わたしは高校生になった。


入学式当日、これから通学路になる桜並木の道を……走っている。



「やばいって、これ! 遅刻っ!」



入学式、午後からだと思ってたわたし、ばか!


入学式を遅刻して、目立つのはごめんだ。


いろんなことを頭で考えながらひたすら走った。


普通なら歩いて30分くらいの道のりを、今日ばかりは全力疾走で10分でついた。



「も……もともと、体力には自信……あったんだよ、ね……」



正門についた頃にはこれでもかと言うほど息切れしていた。


校舎の高いところに設置されている時計をみると、思ったより早くついた。


その証拠に、玄関に張り出されているクラス発表にはまだ人だかりがある。


間に合った……。わたしってば、足早ーい。


玄関まで歩いていると、呼吸は落ち着いてきた。


そして、わたしのクラスが2組だとわかり、なんとか遅刻せずに教室へたどりつけた。


座席も確認し、座って先生が来るのを待つ。


すると、2組の教室にひとりの男子が入ってきて



「生徒手帳、落としたヤツいる?」



そう尋ねた。


その質問に反応した男子が、立ち上がった。


どうやら彼は、生徒手帳を拾った彼の友達らしい。