課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「お前はいつも、俺以外の奴とは楽しそうに話しているが、俺を前にすると、いつも、釣り上げられた魚みたいに動かなくなるじゃないか」

「……それ、釣り上げられた魚じゃなくて、釣り上げられて死んだ魚ですよね?」

 釣り上げた直後は激しく動いてるだろうが、と思った。

 それにしても、女の子を例えるのに、他にいい例えはなかったのだろうか。

 やはりデリカシーに欠ける人だ。

 それにしても――。

「課長、釣りとかするんですか?」

「しちゃ悪いのか」

 たまに大学のときの友達と船で出るという雅喜に、
「課長、お友達居たんですか!」
と言うと、

「殺すぞ、お前……」
と言われる。

 いや、その目つきで言われると、本当に殺されそうなんですけど……。

「すみません。
 課長は切れ者で、その年で課長で。

 なんだか自分たちとは違う。
 すごい遠い存在だと思っていたので」

 そう言うと、
「俺は別に課長になんてなりたくなかった」
 あのまま、開発に居たかったんだ、と言う。

「でも、社長たちが、いずれ、幹部になるようにと総務の課長にしてくれたんじゃないですか?」