ふいーっ、いい気持ちだ。
ああ、ジャクジーと露天風呂とこの風景を自宅に持って帰りたい。
そんなことを思いながら、向かいの連山を眺めつつ、いい気分に浸っていた真湖を激しいノックの音が正気に返した。
「沢田っ」
「はいっ」
今度は、わたくし、なにをやらかしましたでしょうかっ、とジャグシーの縁を握り締め、畏まる。
「さっさと出ろっ。
今度また連れてきてやるからっ」
は?
今、なんと?
と思っている間に、雅喜は、
「すぐに支度しろ。
十時からなんだっ」
とまくしたてる。
十時からって、なにが?
と思いながら、バスタオルを巻いて、戸口まで行った。
ドアを開けようとすると、止められる。
「待てっ。
服を着てるか?」
「……着てません」
じゃあ、開けるな、と言う。
「いや、あの、なにかお急ぎのようだったので」
「十時からなんだよ。
釣り大会が」
「は?」



