朝食は部屋食ではなかった。
が、他の客は居ない。
食事のみの眺めのいい個室が用意されていた。
焼きたてパンを食べながら真湖は、窺うように見ながら、訊いてみる。
やっぱ、課長、あの状態の私を見てたよなーと思いながら。
「あのー、課長、さっきなんで居たんですか?」
雅喜は渋い顔をし、
「すごい物音がしたんだ。
落ちたんだろうと思って、ドアを開けたんだが。
壁を蹴った音だったようだな。
子供か」
と言われる。
「……すみません。
普段はそんなに寝相悪くはないんですよ。
でも、呑むとちょっと」
と苦笑いして誤魔化そうとした。
雅喜はただ、溜息をついている。
お見苦しいものをお見せしまして申し訳ありません、と言いたかったが、言って思い出すのも思い出されるのも嫌だった。
あの日のキスと一緒だ。
掘り返したくないことがまたひとつ増えてしまったな、と思った。
「お、美味しいですね。
この焼きたてパン」
と愛想笑いを浮かべて言ってみたが、
「……そうだな」
とだけ素っ気なく流されただけだった。



