宿にタクシーが着き、愉快な運転手さんに頭を下げて別れた。 いや、向こうに言わせれば、こっちが愉快で変わった客だった、と思われているのかもしれないが。 宿は山の中にあるので、外の風は少しひんやりとしている。 明るい宿の門を見ながら、 「課長、酔い冷めました?」 と訊いてみたが、 「最初から酔ってはいない」 と雅喜は他所を向いたまま言ってくる。 本当に可愛くないな……。 ロビーに入ると、 「お帰りなさいませ」 と笑顔で仲居さんが迎えてくれた。