課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「それでじゃないぞ」

 なにも言っていないのに、雅喜はそう言ってくる。

「だが、確かに、お前でも、湯上がりで、浴衣だと、八割増しは色気があるように見える」

「八割はひどいですよ。
 普段、どんだけ色気がないんですか、私は~」

 そのあと、少し酒の残っている雅喜が、浴衣は悪い習慣だというよくわからない持論を展開し、旅行中に課長と呼ばれると疲れると語り出した。

 ……悪い酒だな、この人。

 いや、わかってたけど。

 でも、悪い酒でも、私の気持ちは読み取って、道後温泉まで連れてってくれたけど、と思ったあとで、

「課長、今、酔ってるから、タクシー代払ってくれただけで、正気に返ったら、返せとか言いません?」
と言うと、

「俺はそんなせこいことは言わないし、酔ってはいない」
と主張してくる。

 酔ってる酔ってる、と運転手と二人、手を振った。