課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 運転手はちら、と旅館を振り返り、まあ、此処に泊まるような客なら大丈夫か、と思ったのか、車をスタートさせた。

 明るい門のところから仲居さんが頭を下げて見送っていた。

 やっぱりもう疲れてたんだな、と申し訳なく思いながら、
「課長、すみません。
 私が出します」
と祈るように手を合わせて言うと、

「出せるか、お前に」
と言ったあとで、

「いいから見て来い、せっかくだから」
と言う。

「でも……」
と言うと、雅喜は少し言いたくなさそうに、腕を組んで、前を見たまま言った。

「この間の、お前が言うところの、ジイさんって彼女の傘寿でな。
 お祝い持ってった以上にじいさんが小遣いくれたんだよ。
 だからいい」

 それが本当なのかどうなのか知らないが、こちらに気を遣わせまいとしてくれているのは確かだった。

 ただ、この話はしたくなかったようだ。

 いい年して、おじいさんにお小遣いをもらったというくだりを特に。

 だが、おじいさんは、孫可愛さからくれるのだから、別に恥ずかしがることもないのではないだろうか、と思いながら聞いていた。

 それに、そんな金あてにしなくとも、普通に持ってそうだし。

「じゃあ……分割払いで」
と言うと、

「あれもこれも分割してたら、いつ払い終わるんだ」
と言われた。