課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「そんなはずないじゃないですか」

「まあ、俺が頼んだのかもしれないしな」

「浮かれてですか?」
と思わず訊くと、

「浮かれるかっ」
と吐き捨てられた。

「俺が行きたいと思って頼んだのかもしれないだろ」
「私とですか?」

「ミュシャを見に行くついでに、此処にだよ」
とあの鋭い視線を飛ばされる。

 温泉で温まった身体が、一気に冷え冷えとしてきそうだ……。

 だが、そこでいつものように引かずに、
「でも私と頼んでますよね」
 私の名前をちゃんと同行者として入れて、と突っ込んでみた。

 肘掛けで頬杖をつき、外の露天風呂の方を見ながら、雅喜は言う。

「……ああ、どういう状況だったんだろうな」

 気になる、と言う。

「カラオケの店員さんとか見てないでしょうかね?
 廊下を行き来されてるわけですし」

「そんなのいちいち覚えてないだろう」

 まあ、それはそうか。

「じゃあ、催眠術師に会いたいです」
と言うと、

「また唐突な女だな」
と言われた。