課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 雅喜はひとつ溜息をついて、説明してくれる。

「此処と同系列の旅館に泊まったな。
 この間、じいさんの傘寿のときに」

「またじいさんですか。

 大丈夫ですか。
 そのじいさんは実在していますか?

 彼女の名前がジイとか言うんじゃないでしょうね〜」

「なに人だ、そりゃ」

 前を歩く仲居さんが笑っている。

 廊下の突き当りの部屋に通された。

 ガラス張りで、そこから、プールのような露天風呂が見える。

 パラソルがあって、ちょっと洋風だ。

 この建物も流行りの和風モダンな感じだった。

 完全に和風だった道後温泉から来ると、なんだか時代の流れを感じる。

 ガラス張りの前のソファで、ウェルカムドリンクとケーキをいただきながら、真湖は言った。

「でもそうか。
 泊まったことあるから、簡単に予約したんですね。
 私が泊まりたいって言ったとき」

「お前が言ったんだったのか?」

「知らないですけど。
 私が言いそうじゃないですか、浮かれて適当に」

「浮かれて適当に言うな。
 誰にでも言ってるのか?」
と雅喜は疑わしげに言ってくる。