課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 戸口に居た彼はやってきて、腰を押さえている真湖を見ていたが、
「仕方ないな」
と溜息をつく。

 真湖の身体の下に手を入れ、ひょいと抱き上げた。

 うわっと思ったのは、抱き上げられたからと、それにより、雅喜の顔が近くなったからだった。

 しかし、その雅喜の顔は、真湖とは違い、なにも動じていないように見えた。

「監査役のコピーは清水がシステム課のコピー機でやってるから」

「そ、そうですか。
 すみません……」
と言ったつもりだったが、痛みで声が少し途切れ途切れになる。

「病院行くか?」

「そこまででは……」

 そう言うと、雅喜は一階の健康管理室に連れていってくれた。

 ちょうど誰も居らず、
「少し寝とけ」
と言い、ベッドに下ろしてくれる。

「安田さんに行っておいてやるから」

 安田さんは、元看護師さんで、人事で健康管理を受け持っている。

「そこまでじゃないです。
 さっき、打ったときはすごかったけど」

「そうか。
 じゃあ、早めに戻ってこい。

 堀田が居なくなって、人手が足りない」

 そう言い、バサッと足許にたたんであった布団をかけてくれるが、いまいち優しさが感じられない。