課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

 まあ、どうぞどうぞ、と真湖は一緒に買っておいたツマミを差し出す。

「……ぬかりないな。
 お前、既に旅をエンジョイしているな」

「当たり前じゃないですか」
と言いながら、雅喜越しに窓の外を見た。

 トンネルが多いので、暗いことも多いが、見知らぬ景色が飛ぶように流れていくのを見るのは楽しい。

「それにしても、可愛いですよね、このカップ」
と真湖はカップをもう一度眺める。

「持って帰ろうかな。
 ああ、でも口紅がついちゃってる」
とカップを回しながら見た。

「とれないだろうな、紙だから」
と言ったあとで、雅喜が、

「俺のをやろうか」
と言ってくる。

「え」

「洗えば大丈夫だろう。
 口紅はついていない」

「わかってますよ〜」

 真顔でなに言ってんですか、と思った。

 それにしても、課長の杯をいただいて帰るとか。

 熱心なおっかけか、ファンのような行為だが。

 まあ、せっかくのご厚意なので、ありがたくいただいておくか、と思った。