課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「お前、数々の深酒による失態をもう忘れたのか」

「あれは失態だったんですかねえ?」
と真湖は考えもせず、ぺらぺらしゃべる。

「よく考えたら、私、深酒しても、課長としか間違いを起こしていません」

 暗い海に漁船の灯りが綺麗だ。

「……そうだな」
と雅喜が笑う。

「まあ、今更、間違いでも、失態でもないか」
と呟いたようだった。

「それにしても、今日の課長は格好よかったですっ」
と感謝を込めて言うと、雅喜は、いつもは……? という顔をする。

 椅子に背を預け、真湖は大きく息を吐いた。

 その弾みで涙がこぼれる。

「あれっ? すみません。
 なんか、今になって、安心しちゃって。

 ……すみません」
と真湖は繰り返し、一生懸命、今の涙をなかったことにしようと、手の甲で目許を何度も拭った。

 雅喜の手がそっと肩を抱く。

 真湖は雅喜に寄りかかるようにして、涙を呑み込んだ。

 人前で泣くのは、あまり好きではない。