課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜

「此処、会社ですっ。
 会社ですよっ」
と抑えた声で真湖は叫び、落ち着きなく、周囲を見回す。

 羽村が吹き出した。

「面白いね~、真湖りん」

 いやあの……面白いのはわかりましたから、手を離してください……。

「土曜はさ。
 新婚家庭にお邪魔したみたいでさ。

 すごい楽しかったけど、胸が痛かったよ。

 それでわかったんだ。
 五嶋課長はいい人だし、気も合う気がするけど。

 でも、僕はやっぱり、沢田さんが好きだな。

 三上のことも、もう許してもいい。

 あの彼女より、沢田さんの方が好きだから。

 でも、三上が君にちょっかいかけるのなら、別だけどね」

 じゃあ、またね、と言い、つかまれている手を引き寄せられ、頰に軽く口づけられた。

「これも通報するといいよ」
とあの上品な顔で微笑む。

「階段ですれ違ったとき、ぶつかったんじゃないですか? って言われるよ。
 じゃあね」
と手を離すと、その手を軽く振って、階段を上がっていってしまう。